SP02 思い出のカレッジリング3




ティアはフォールハウト自治国とラスヴァール王国の国境にある
小さな宿場町に来ていた。
ここは盗賊見習いを始めたティアの最近のホームタウンである。

「そうそう、あの頃はいろいろあったなぁ」
食堂でハーブティーを飲みながらティアはサラと過ごした2年程前の事を思い出す。

「なぁに、一人でニヤニヤしちゃって? 何かよい事あった?」
声をかけてきたのはこの食堂でウェートレスをしているメリルだ。
メリルはティアとは町こそ違うものの同郷のイフローラ王国出身という事があってか
仲良くしてもらっている。

「ハーブティーを飲むと昔の事を思い出すのよ。
 あの時飲んだ味は今でも忘れられないよ・・・」
「それってウチのは美味しく無いって事〜?」
メリルは冗談交じりにいたずらに笑う。

「違うよ、ここのも美味しいけど、ただあの味だけは最初で最後、特別だったから・・・」

ティアはそうつぶやくと指にはめられた指輪を見た。
魔法の効果も何も無い指輪。
しかし、ティアにとってはとても大事な『カレッジリング』なのだ。

「素敵な指輪ね」
ティアの事情を察してかメリルは深くあれこれと聞いてこないので
今のティアには居心地が良い。

「・・・ん?そういえば何か忘れているような・・・?」
そう言ってティアはある約束を思い出した。

「メリル!今日って何日?!」
ティアは突然立ち上がるとメリルに聞いた。

「え?17日だけど・・・それがどうかした?」
メリルはきょとんとしている。

「約束の日まで一週間だ!!、メリルお勘定!」

「ちょっとティア!どうしたのよ!」
「約束だよ!一週間でフォールハウトのルウェンに行かなくちゃ!!」
そう言うとティアは慌てて食堂を飛び出した。



『二年後の今日、ここでまた会おうね。』

サラは留学を終え、国に帰る前にティアにそう告げていた。
あの塔のある場所だ。

『きっとソテロ・ソディを平和な国にして見せるよ_____』

サラはそうも付け加えた。

『ソテロ・ソディの和平交渉が決まった』というニュースで
すぐにサラとの約束を思い出すべきだった。
ティアはそう毒気づいた。

一週間後、なんとかルウェンに着いたティアはあの廃墟と化した塔に来ていた。

____誰もいなかった。
中は当時のままだった。

「・・・そうだよね、サラも忘れちゃってるよね」

あの合宿の後、ティアは魔法学院をなんと首席で卒業し、
フェンの誘いでそのままレステンシア王国の宮廷魔術師への道へ。
サラは国に戻りソテロ・ソディの和平交渉役に抜擢されたというのを風の噂で聞いた。
そのせいかお互い国を預かるという激務に追われて忙しくなり
段々と疎遠になっていったのだ。

何時の間にか夕方になり日も落ちかけてきた。
ティアが塔を後にしようとしたその時___。

____夕日のオレンジ色の中に息を切らしたサラがいた。
頭には出会った時と同じようにターバンを巻いている。

「ごめん、遅くなった・・・」

そう言うとにこっと笑った。
会わなかった二年の間にすっかり大人びてしまったサラだが
その笑い顔は昔と何一つ変わらなかった。
そして指にはあの『マリアベルの指輪』が今もはめられている。

『久しぶり、サラ____』


おわり。



■合宿の後日談
合宿の後、ティアはファイヤーボールの進化系を発表、
とても素晴らしい2重のトラップ構造(*SP01.旅の途中参照)は
各方面から絶賛され一目置かれる存在になった。
当然マリアベルのヒントから生まれたアレンジ魔法であることは言うまでも無い。
後のファイヤーボールはこの時のティア版が主流となる。

「しかし、『sabu』とは私も思いもしなかったな。・・・ん?」
フェンはティアの魔法報告書を読んでいてある事に気がついた。

「なんだ、これは・・・。」

ティアのファイヤーボールの進化系___。
それには『対象近くにエルドラス院長がいる場合、エルドラス院長のあごヒゲを燃やす』
という隠しキーワードが隠されていた。
思えばティアは合宿中エルドラスのあごヒゲを燃やす事は結局出来なかった。
しかし、魔法にもう一つ私的なトラップを組みこんだのだ。

「ははっ!傑作だ! しかし、うまい事考えたな、これなら誰も気がつくまい!
 面白いからこのままにしておこう・・・。」
フェンはそうつぶやくとそっとファイルを閉じた。

この私的トラップは後に魔法学院の学院生エレーヌ(*SP01.旅の途中登場)によって
達成されるがこれはまた別のお話。

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